【電力】自由化と独占の美味しいとこどりのPPLコーポレーション(PPL)

こんにちは。
いも次郎です。

今回紹介するのはPPLコーポレーション(PPL Corporation, PPL)です。

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企業概要

PPLコーポレーションはアメリカの電力会社です。

アメリカの電力事情は週によって大きく異なっています。

州によって電力を自由化している州としていない州があります。

電力の自由化とは電力会社の新規参入を認めるという政策ですが、発電についてはアメリカは比較的早くから自由化していました。

ところが送電事業となると、すでにネットワークを張り巡らしている事業者に対して新規で参入しても勝てるわけはなく、送電から小売にかけては独占状態が続いていました。

そこで、送電事業についても送電網を開放させ、電力の卸売り・小売り制度を整備することで、送電事業の新規参入の障壁をなくしました。

また既存企業の発電事業と送電事業を分離(発送電分離)させることで、送電事業においてもフェアな競争環境を作りました。

もちろん既存の(発電もしている)電力会社もそのまま市場に残り、既存企業は卸売価格のまま消費者に電力を提供することも可能なわけですが、そうすると(小売価格-卸売価格)分の利益がなくなってしまうため、そんなことはしません。

シェアを奪われますから従来通りの価格では勝負できなくなりますが、そこそこ利益を出せる水準でシェアを全部奪われない程度に価格を設定することで既存企業も利益を確保することができますし、新規参入企業もシェアをある程度は確保できるようになるというわけです。

上記が電力の自由化の概要ですが、この施策はアメリカ全土で一律に実施されているわけではなく、州によって異なる歩みを見せます。

歩みがかなり急だったのがカリフォルニア州です。

カリフォルニア州はいち早く(1990年後半)電力を自由化しました。

このカリフォルニア州で2000年に電力に関して大問題が発生したのです。

当時ITバブルにより電力需要が急増したにもかかわらず、新規の発電施設建設には厳しい環境基準をクリアしなければならず高コストになりがちで新規施設建設が進みませんでした。

天然ガス価格の上昇と猛暑が重なってしまったことで卸売価格が高騰します。

また小売価格が高騰してしまうと市民への影響が甚大になってしまうため小売価格の上限が定められていたので、あっという間に卸売価格が小売価格の上限にまで迫ってしまい送電事業者の利益が吹っ飛びます(むしろ赤字に、、、)。

それを見た発電事業者は送電事業者が発電料金を払えなくなってしまうのではないかという危機感を抱き、供給を渋り始めます。

十分に電気が供給されなくなってしまったため、送電会社は大規模な輪番停電をせざるを得ない状況に陥ってしまったのです。

これがいわゆる「カリフォルニア電力危機」です。

これにより州経済は悪化してしまいます。

この状況を見た他の州は電力の自由化を尻込みし始め、電力の自由化をしている州としていない州に分かれてしまいました。

PPLコーポレーションが事業を行っている州はペンシルベニア州とケンタッキー州ですが、ペンシルベニア州は自由化が進んでいて、ケンタッキー州は自由化されていないという状況です。

つまり、自由市場で生き残るための企業努力はしつつ、一方では独占に近い状況の市場も抱えているということで、安定利益と成長を両立しているのではという期待が持てそうです。

なお、PPLコーポレーションはイギリスでの電力事業も行っており、さらにケンタッキー州では天然ガスの供給事業も行っています。

創立は1920年で、本社はペンシルベニア州のアレンタウンにあります(Billy Joelの歌が聞こえてきそうです)。

そんなPPLコーポレーションですが、データを見ていきましょう。

データ分析

さて、まずは損益計算書を見ていきます。

損益計算書(単位:ドル)

まぁ安定ですね。

発電に使う石油・ガス、その他エネルギー源、他の発電会社からの電気供給など、原価がかなりかかるのではないかなぁと予想していたのですが、案外原価の割合はそこまで高くありませんでした。

化石燃料の高騰によりすぐに赤字転落するということはあんまりなさそうですね。

営業費用は減価償却費がかなりの割合を占めています。

当然電力施設は超高額でしょうから、減価償却費もかなりの額になるようです。

電力なので、コロナ禍の影響はあまりなさそうですが、一応四半期データも見ておきましょう。

2020年6月はさすがに若干落ちていますが、すり傷程度でしょう。

コロナ禍ではびくともしませんね。

売上高推移(ドル)

売上高の推移ですが、電力会社なので上がったり下がったりはしなさそうですが、その予想をそのまま反映したグラフになっています。

安定ですね。

営業利益率(%)

こちらは化石燃料の価格に左右されるでしょうから多少は上下していますが、それでも安定していますし、この高水準には驚かされます。

ケンタッキー州が自由化されていない影響でしょうかね。

EPS(ドル/株)

一株当たりの純利益を表すEPSですが、こちらも多少は上下に動いていますが、上昇傾向とか下降傾向とかそのような傾向はなく、水平飛行と言えそうです。

株主還元

続いては株主還元について見ていきましょう。

まずは一株当たりの配当金(ドル)と配当利回り(%)です。

毎年増配していますし、配当利回りは高水準です。

安定していて利回りは高いとなると、かなり魅力的な投資先ではないでしょうか。

配当性向も少し見てみましょう。

かなり配当に力を入れていることが分かります。

ですので、急に配当金が激増するということはなさそうですが、配当には気を配っている様子がうかがえます。

よほどのことがない限り減配はしなさそうな気配です。

なおPPLコーポレーションはBuybackはここ数年は行っていないようです。

株価の推移も見てみましょう。

株価

コロナ禍の影響で株価が下落していますが、先ほど四半期データで見たように、影響は軽微ですから、なんとなく下げすぎかなぁという印象です。

もちろん貸借対照表やキャッシュフローで問題があるのかもしれませんので、注意深く見ていきたいと思います。

ちなみに分析のタイミングでのPERは10%前半でしたから、米国株の平均を大きく下回っており、割安になっているというデータもあります。

貸借対照表(単位:ドル)

次に貸借対照表を見ていきましょう。

流動比率(流動資産÷流動負債)が100%を下回っています。

つまり、1年以内に工面できる資産以上に1年以内に返さなければならない借金が多いという状況です。

一般にはこの状況はあまりいいとは言えません。

ただ、電力会社は現金の回収が早く(売掛・買掛などがあまりない)、回収した現金を借金の返済に充てられますので、そこまで心配する必要はないようです。

実際、日本の電力会社でも100%を切っている企業はたくさんあります。

純資産もそこそこ多めなので、あまり心配しなくてもよさそうです。

自己資本比率(%)

自己資本比率は年々上昇傾向にあります。

安定化の道を歩んでいるのではないでしょうか。

ROE(%)

自社の純資産からどれだけの利益を生んでいるか、つまりいかに効率よく利益を生んでいるかを表すROEですが、こちらはそこまで高くないですね。

しかしながら電力会社で10%を超えれば十分かなぁと思います。

キャッシュフロー(単位:ドル)

最後にキャッシュフローを見ていきましょう。

営業キャッシュフローは比較的安定しているかなぁと思います。

投資にはたっぷりお金を使っていますね。

電力設備の維持・増強にかなりのお金を使っているようです。

それを補填するために財務キャッシュフローはプラスの年が多いです。

借金をしたり、株式を新規で発行しているようです。

このため株価が上昇しないのでしょうかね。

結論

データから10点満点で下記の4項目を評価します。

利益安定性 (ストレスフリー度)7 / 10 点
財務健全性 (ストレスフリー度)5 / 10 点
株主還元性 (わくわく度)8 / 10 点
成長性 (わくわく度)5 / 10 点
あくまで主観なので、最終的にはご自身で評価してください

今回はそこそこよかったです。

利益安定性については、抜群の営業利益率と安定した売上高・営業キャッシュフローがありましたので、高評価の7点を付けました。

財務健全性については、流動比率が100%を下回っていたのが、気にしなくていいと言っても若干は気になるのと、投資キャッシュフローが毎年高額なのが若干気にはなりましたが、自己資本比率も高めですから、中立の5点を付けました。

投資が落ち着いて、借金や株式の新規発行の傾向が落ち着いたら評価が上がると思います。

株主還元性については、増配に高利回りと配当に関しては言うことがありませんでしたが、あとは株価が安定すれば言うことなしということで、期待を込めての高評価で8点です。

最後に成長性ですが、投資にしっかりお金をかけていますが、電力事業なのでそこまで大きな伸びは期待できませんから(かといって斜陽産業でもありませんので)、中立の5点です。。

今回は高評価でしたが、まだまだ初心者で勉強不足のいも次郎の甘々分析です。

評価を鵜呑みにせず「こういう考え方もあるんだ」ぐらいにとどめておいてくださいね。


なお、本銘柄の売買を推奨するものではありません。
読者の本ブログの情報を基にして行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。
売買はあくまでご自身で判断し、自己責任でお願いいたします。


That’s all !!

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